セピアの世界
○歩く

ボクと彼女は
電車通学で
高校が一駅違う。

朝、ボクの降りる駅の向こうで
彼女が降りる。
帰り、ボクの乗る駅の向こうで
彼女が乗る。

学校の帰り
彼女の部活のない日は
ボクの乗る駅で待ち合わせて
一駅歩く。

緑の多い区間を
二人で選んで。

深く深呼吸をする。

風が運んでくる
海のにおい。
夏に向けて力をためている
木々のにおい。
並んであるく
彼女の静かな香り。

「もうすぐ蝉も鳴きだすね」

彼女と歩く時間は
発見がたくさんある。
大切な時間。
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