セピアの世界
○未成年

ボクは風呂場で
湯船につかりながら
自分の手を見た。

ボクはこの手で
彼女の手を
温めていたかった。

高校一年で。
時給800円で。
どんなことをするのにも
親の承諾が必要な
未成年の手だ。

両手を受け皿に
これでもかって
湯をすくってみる。

ぽたぽたと
こぼれ落ちていく。
流れ落ちていく。

それでいても、
ボクは自分の器量を
誰にも負けないぐらい
大きなものにしたいと
心の底から思った。

彼女のすべてを
受け止められるくらいにと。
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