セピアの世界
○カエル

雨が上がった
帰り道。
彼女と歩く。

彼女の話が途切れ
彼女の足が止まる。
ボクも止まる。

カエルが死んでいる。

歩道の隅っこ。
大きなキズはないけれど
おなかが空を向いて
動かない。

あじさいの
大きな葉っぱに
ちょこんといそうな
小さなカエル。

「迷わないで天国へ行くんだぞ」

彼女はカエルに
植木の葉を2,3枚
失敬してのせた。

彼女の言葉は
思っていたのより
力強かった。

彼女の温かなやさしさが
カエルに届くといい。
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