セピアの世界
○らしく

お店を出ても
彼女はまだ話をした。

彼女には
ゼンマイがついていて。
ボクが
いっぱいまで
回してしまったようだ。

別れ話は彼女らしかった。
ボクは決意を聞いたときから
何となく覚悟はしていた。

ボクと彼女の別れ話は条件付き。

「それまでは今のままでもいい?」

元気のない控えめな彼女。
こんな彼女は
見たことがない。

ボクは静かにうなずいた。

彼女の出発への
カウントが始まる音がする。

彼女には
いつもの彼女でいてほしい。
それは
ボクの望みだから。

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