ぜんぶクリスマスのせいだ。


「あ……っ、まって!」

「……は?」


踵をかえして出口へ歩み出す三宅のスーツの裾を思わずグッと掴んで引き留める。
その行動はほとんど反射だった。脳を通す前に体が勝手に動いていた。

……しまった。なんてことしちゃったんだろう。

ハッと我にかえって慌てて手を離すと、三宅は訳がわからないという表情で、は?と短く声をだした。


「な、なんでもないの!ごめん引き留めたりして……」


体が勝手に動くくらい、フラれた寂しさが大きかったなんて。
そしてそれに三宅を巻き込もうとするなんて。
私って、こんなにめんどうな女だったのか。

軽く自己嫌悪に陥り、なんとなく三宅の顔が見れなくてバッと後ろを向いて、わざとらしくパンを選ぶ“ふり”をする。
後ろにいるであろう三宅の気配を感じながらもパンを眺めていると、背後から“はぁ……”という深く呆れたようなため息が聞こえてきて、突然引き留めるなんて意味不明な行動をする私に呆れたんじゃないかと思い、体がビクッと震える。


「だったら、それ買ってこい。あとそこのドーナツもつけろ。前で待ってるから2秒で来い」

「え……っ」

「えっ、じゃない。帰ってもいいのか?」

大量の菓子パンが入った袋を持ち、腕を組ながら、にやっと笑ってそう言った三宅に“わ、わかった!買ってくるから待ってて!”と慌てて言葉を返した。
すると、三宅はまた小さく笑って店を出ていった。


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