ぜんぶクリスマスのせいだ。
「ありがとうございました」
いつもよりワントーン明るめの声を出し、つけたしたようにサンタ帽を被っている店員さんに軽くお辞儀をして店を出る。
買ったのは三宅に頼まれていた期間限定のサンタのデコレーションが施されたサンタパンとドーナツ。そして自分のぶんのサンタパンと明日の朝ごはん用にハムマヨパン。
なんだか少し気恥ずかしく思いながら、三宅のもとにいく。店前のガードレールに寄りかかり、手をポケットに突っ込んで、巻いている深い青色のマフラーに顔を埋め、寒そうに白い息を吐く三宅にパンを手渡す。
「どうぞ。三宅様ご所望のサンタパンとドーナツでございます」
「うむ。よくやった」
まるで殿に仕える家来のような素振りで言うと、三宅は偉そうな表情を作り、この意味不明なノリに付き合ってくれた。
こんな深夜に寒空のした、なにも聞かずにそばにいて付き合ってくれて、くだらないノリにも乗ってくれて、三宅は冷たそうに見えて意外と不器用だけど優しいひとだ。
躊躇なくサンタパンにかぶりついた三宅を見ながら、ふとそんなことを思う。こちらを見ることなく美味しそうに食べ進める三宅を見て、思わずぐぅとお腹がなった。その音を聞いた三宅が、ふっと小さく笑った。
「色気より食い気だな」
「な、なによ。悪い?」
色気より食い気。それにこんなに可愛いげないし。
……ふられて当然だったのかもしれない。思えば最近は彼に可愛くみられようという意識がなかった。このまま結婚するんだろうな、となんとなく余裕を感じてしまっていて、デートをするにも、付き合いたての頃のように、メイクに時間をかけることも、服選びに慎重になることもしていなかった。