ぜんぶクリスマスのせいだ。
「不器用なくせに人一倍頑張って、毎日残業して一生懸命なとこが可愛い」
「み、三宅だって、ほぼ毎日残業してたじゃん!」
「この俺があんなとろとろ仕事してるわけないだろ。いつも定時にきっちり終わってるわ。……お前がいつも遅くまで残ってるからだろ」
不機嫌そうに眉間にシワをよせて、そう言った三宅。
“あんな時間に女一人で確実になにもなく帰れるほど安全じゃないんだよ。お前みたいな色気のないやつでも好む物好きがいるかも知れないだろ”と、見つめあっていた視線を気恥ずかしそうに外してそう言った三宅に、私は唖然とした。
……いつも、残ってる私を待ってたの?
わざわざ残業してるふりして、私を送るために?
な、なにそれ。なんでこのタイミングでそんなこと言うの。
戸惑ったままの私を見て、三宅は柔らかく微笑んだ。
そして私の首にかけたマフラーを引っ張って、キスをした。
「……フラれたばっかでこんなことして悪いけど、いつかこうしたいと思ってた。
まだ心の整理がつかないなら、クリスマスの浮かれた空気にやられたと思って、流されてくれ」
三宅はつり目がちの目を細目ながら、私を見つめる。
ふりかかる雪が顔や手についてすーっと溶けていく感覚に、私のなにかがほどけた。もういいのかなと思ってしまった。三宅が言うように、これもクリスマスの浮かれた空気のせいだ。クリスマスじゃなければ、こんな風に流されたりもしないのに。
見つめあって、再び唇が触れる雰囲気になったとき、寒さからか、鼻の奥がむずむずとしだして、ついにくしゃみをしてしまった。