その手が離せなくて







「望月柚葉です」


会社の新歓以来かもしれない。

こんなにも沢山の人に自分の名前を名乗ったのは。


立食形式で行われている今回の合コンパーティー。

真ん中に豪華な料理を並べて、その周りを沢山の男女が行きかっている。

周りは全面ガラス張りの窓。

すっかり夕日も落ちて、今はロマンチックな東京の夜景を臨める。

ぼんやりと1人でその景色を眺めていたいけど、途絶える事のない会話が永遠と続いていく。



「すいません。ちょっとお手洗いに」


会話の微かな途切れに、すかさずそう言う。

慣れない合コンはちょっと私には苦痛。

同じ様な事を何度も何度も喋っては、無理に笑顔を作って相手の話に相槌を打つ。


なんだか、仕事している時と変わらないな。

そう思う時点で、ダメなのかもしれないけど。
< 10 / 366 >

この作品をシェア

pagetop