その手が離せなくて
「望月柚葉です」
会社の新歓以来かもしれない。
こんなにも沢山の人に自分の名前を名乗ったのは。
立食形式で行われている今回の合コンパーティー。
真ん中に豪華な料理を並べて、その周りを沢山の男女が行きかっている。
周りは全面ガラス張りの窓。
すっかり夕日も落ちて、今はロマンチックな東京の夜景を臨める。
ぼんやりと1人でその景色を眺めていたいけど、途絶える事のない会話が永遠と続いていく。
「すいません。ちょっとお手洗いに」
会話の微かな途切れに、すかさずそう言う。
慣れない合コンはちょっと私には苦痛。
同じ様な事を何度も何度も喋っては、無理に笑顔を作って相手の話に相槌を打つ。
なんだか、仕事している時と変わらないな。
そう思う時点で、ダメなのかもしれないけど。