その手が離せなくて
目に映ったのは、薬指に輝くリング。

すっかり手に馴染んで、彼の一部になっている。

今まで、無かったもの――。


「まぁ、どうでもいいですけど」


口を開けようとした彼の言葉を、冷たい言葉で制す。


そう。

どうでもいい。

もう、どうでも。

言い訳なんて、今更聞いても仕方ないから。


「望月」


思わず唇を噛みしめた私の名前を呼ぶ彼の声。

抗う様に目を背けたけど、促される様にもう一度名前を呼ばれた。


「顔上げて」

「――やだ」

「上げて」


どこか甘い声が、私を従わせる。


ずるい。

あなたは、本当にズルイ――。


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