その手が離せなくて
◇
長い長い宴会が、終わる事なく続いている。
お酒を飲む気になんて全くならなかったけど、それでも今日ここに来たのは顔を広める為。
ここで欠席なんて、ありえない。
「望月です。どうぞよろしくお願いします」
ニッコリと営業スマイルをかまして、束になっている名刺を渡していく。
徐々に自分の名刺は減ってはいるけど、頂いた名刺が比例する様に増えていく。
聞いた事ある会社ばかり。
さすが一流企業ともなると、取引先も一流ってわけだ。
私も会社の代表として来ている以上、会社の顔としてしっかり仕事をしなきゃ。
ウジウジといつまでも悩んでいては、いけない。
一段落した所で、ゆっくりと大きな会場を見渡せば、一角に人だかりが見えて視線を止める。
先程から何かなと思っていたけど、ようやく輪の中心にいる人物が目に入って微かに胸が痛んだ。