その手が離せなくて

「奥さん・・・・・・は、どういった方なんですか?」


ガヤガヤと騒がしい会場に消えてしまいそうな程、小さな声。

こんな事聞きたくないのに、好奇心が勝った。

ユラユラと揺れる瞳で、遠くにいる彼を見つめる。

すると、隣の男性は微かに赤い頬を持ち上げて口を開いた。


「素敵な女性ですよ。確か、一ノ瀬より2つ年上だったかな」

「――」

「バリバリのキャリアウーマンで、美人で。類は友を呼ぶって本当なんですね」


ケラケラとお酒を片手に、豪快に笑う男性。

そうですか。と言った言葉は聞こえていたか分からない。


バカだな、私。

こんな事聞いて、傷つく事分かってるくせに。

聞かなきゃよかった、なんて今更思っても遅いのに。


「すいません、ちょっとお手洗いに」


なんだかこの空間にいたくなくて。

彼が他の女性と話す姿を見たくなくて。


私は逃げる様に会場を後にした――。


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