その手が離せなくて
繋がったのは
「寒・・・・・・」
空に向かって、はぁと吐いた息が白い。
火照った体を冷やす為に外に出たはずだったけど、あまりの寒さに凍えてしまいそうだ。
大きく息を吸えば、キンとした冷たさの中に緑の香りがする。
山の中だからか空気が澄んでいるんだと思う。
今では慣れたけど、上京したばかりの頃は東京の空気の汚さに驚いた。
「はぁ・・・・・・」
無意識に零れた溜息が、誰もいない世界に落ちる。
後悔、している。
奥さんの事、聞いてしまった事に。
嫉妬の渦が大きくなって、飲み込まれてしまった。
私はピエロだったんだと思う。
ちょっと脇見をして、つまみ食いしただけ。
だって私と彼、どう見たって釣り合わない。
超エリートの完璧な一ノ瀬さんと。
どこにでもいる様な、平凡なOLの私。
誰が見ても、釣り合わない。