その手が離せなくて

「あ~疲れた~」


勢いよくソファーに腰かけた瞬間、無意識に落ちた声。

ゆっくりと深い溜息を吐いて、天を仰いだ。


久しぶりに合コンなんて来たからかな。

それとも、久しぶりに仕事以外で男の人と話したからかな。

酷く気疲れしてる気がする。


脱力感が体を覆って、ただただボーっと天を仰いだ。

騒がしい会場から少し離れた所にある、この小さなロビー。

ありがたい事に、貸切状態だ。

ぼーっとしていると、どこか聞き覚えのあるクラシックの音楽が聞こえてきて、思わず口ずさむ。


「戻りたくないな~」


小さく呟いてゆっくりと視線を下した時、視界の先に真っ青な水槽が目に入った。

淡い照明の中に浮かびあがる、まるでオアシスの様な青。

どこか幻想的なその光景に、思わず釘付けになる。


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