その手が離せなくて
どこまでいっても臆病な私。

傷つく事が怖くて、本当の気持ちすら伝えられない。

彼の本当の気持ちすら聞けない。


だけど、これは普通の恋じゃない。

逃げ道を作る事は、悪い事なのかな?

いつか終わってしまう恋だから、少しでも傷つかない様に自分を守ってしまう。

すべてが終わってしまった時、一人でも立っていられる様に――。


小さく呟いた私の言葉を聞いて、彼は息の下で笑った。

ゆっくりと抱き着いていた体を離すと、私をじっと見つめる一ノ瀬さんがいた。

優しく弧を描く唇が、優しく細められた瞳が、私のすべてを壊していく。


愛おしいと思う。

何よりも、あなたが。


出会った時から、そうだった。

ずっと私は、あなたを追いかけていた。

振り向いて私の名前を呼ぶ声を、私に見せてくれる笑顔を、ずっとずっと、追いかけていた。


大好きなの、一ノ瀬さん。

初めて出会ったあの瞬間から、きっと私はあなたに恋をしていた。

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