その手が離せなくて

「このパーティーに参加してる人?」


お互い笑い合った後、一呼吸おいて目の前の男性が首を傾げて問いかけてきた。

一度、チラリと後ろの会場に視線を向けてから。


「はい。数合わせで。でも、なんか疲れちゃって」

「俺も同じ」

「え?」

「数合わせ。と、疲れたって事に」


苦笑いを浮かべた私に、男性もつられる様にして苦笑いを浮かべて肩をすくめた。

その姿に、再び笑みが零れた。










「名前、聞いてもいいですか?」


お互い誰もいないロビーのソファーに腰掛けてから、隣に座った彼にそう問いかける。

どうしてか、ここに彼を引き留めていたくて。

彼の事をもっと知りたくて。
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