その手が離せなくて
「このパーティーに参加してる人?」
お互い笑い合った後、一呼吸おいて目の前の男性が首を傾げて問いかけてきた。
一度、チラリと後ろの会場に視線を向けてから。
「はい。数合わせで。でも、なんか疲れちゃって」
「俺も同じ」
「え?」
「数合わせ。と、疲れたって事に」
苦笑いを浮かべた私に、男性もつられる様にして苦笑いを浮かべて肩をすくめた。
その姿に、再び笑みが零れた。
◇
「名前、聞いてもいいですか?」
お互い誰もいないロビーのソファーに腰掛けてから、隣に座った彼にそう問いかける。
どうしてか、ここに彼を引き留めていたくて。
彼の事をもっと知りたくて。