その手が離せなくて

「意地悪」

「俺は可愛いと思ったけど?」

「もう、喋らないでっ」


恥ずかしくて逃げたいのに、彼が未だに私の上に乗っているからどこにも行けない。

だから、クスクスと可笑しそうに笑う彼を睨みつける事しかできなかった。

だけど、私も単純なもので、彼が優しく微笑みながらいつもの様の髪を撫でてくるもんだから、すっかりご機嫌も治ってしまった。


「早く暖かくならないかなぁ」

「あと1ヶ月半もすれば桜も咲くだろ」

「一緒に見れたらいいな、桜」

「そうだな」


他愛もない会話が輝いている。

一歩先の未来も見えないはずなのに、ずっと彼と一緒にいれると錯覚してしまう。

そう思ってはいけないのに、願ってしまう。

このままずっと、2人でって――。



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