その手が離せなくて
「に、26ですっ!!」


その誤解を早く解きたくて、体を前のめりにしてそう言う。

すると、少しだけ驚いた様に瞳を見開いた彼だったけど、直ぐにその精悍な顔がくしゃりと崩れた。


「じゃぁ、俺の2つ下だ」

「一ノ瀬さんは28?」

「そうなるね。頭の中はまだまだ子供だけど」


苦笑いを浮かべた彼を見ながら、私も。と呟く。

そんな私を見て、一ノ瀬さんはケラケラと笑った。


まるで吸い込まれるみたい。

磁石の様に惹かれていく気がする。


彼の事をもっと知りたくて。

新しい表情が見たくて、目が離せない。

初めて感じた感覚に、ただ茫然と一ノ瀬さんの姿を見つめた。


「――・・・・・・あのさ」


どこか静かな空間に落ちた、彼の声。

その声で我に返った私は、瞬きを何度か繰り返した。


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