その手が離せなくて

「ふふっ、あったかい」


ぎゅっと彼を抱きしめる。

じんわりと彼の熱を感じて、頬が緩んだ。


ようやく繋がれた。

やっと、一つになれた。

嬉しくて、幸せで、堪らなかった。


禁忌を犯している事も。

誰かを不幸にしている事も。

間違った事をしている事も。

全部全部、見えなかった。


恋は盲目。

本当にそうだと思う。

悲しみなんて、切なさなんて、罪悪感なんて、この時は微塵も感じなかった。


互いに微笑みあってキスをする。

どこか微かに恥ずかしさを伴って。

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