その手が離せなくて

私だけを見て欲しいだなんて、思っちゃいけないのに。

愛してほしいだなんて、願っちゃいけないのに。

もう、願わずにはいられない。

愛おしくて愛おしくて、堪らないの。


あなたの心の一番傍にいるのが、私だったらいい。

他の人じゃ埋められない場所が、私だったらいい。

一番自分らしくいられる場所が、私の傍だったらいい。


私に見せるその笑顔を、本当は誰にも見せてほしくない。

怒った顔も、拗ねた顔も、何もかも、私のものだったらいいのに――。


「ねぇ、一ノ瀬さん」


愛している。と心の中で呟いて、彼の頬を撫でる。

迷路の様だと思った。

出口の見えない迷路に、一人佇んでいる気分だった。


「もう一回、抱いて」


だけど、自分の意志で私はここにいる。

涙に濡れた未来だと分かっていても、私はあなたの側で笑っていたい。

あなたが、私を少しでも必要とするならば。
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