その手が離せなくて


再び唇を重ねて、肌を絡ませる。

少し冷えた体が再び熱を伴う。


「今度は名前で呼ぶね」

「期待してないけど、待ってる」


いつか、会えなくなる日がくるだろう。

こんなに愛していても、一緒にいる事は許されないんだから。


だから今日のこの時を、宝物のように思おう。

いつか思い返した時に、幸せだったと思える様に。


未来の事を考えるのは止めた。

今幸せなんだから、それでいいじゃないか。


きっと狂っている。

最低な女だと思う。

不倫なんて、するもんかって思っていたのに――。


「キス、して」


どこにも行かないで。と誰にも届かない想いを胸に、私をそっと目を閉じた。

目の前の彼を強く、抱きしめながら――。


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