その手が離せなくて
第二章
歯車
「では、少し休憩しましょう」
チームリーダーの一声でみんなが大きな溜息を吐く。
大きな楕円形のテーブルの上は沢山の資料で溢れていた。
今日は久しぶりに彼の会社と一緒にお仕事。
あの神隠し事件があってから電話などで何度か打合せなどはしていたけど、こうやって顔を合わせて仕事をするのは久しぶりだ。
会社のエントランスをくぐってから、見つからない様にと視線だけでキョロキョロと彼の姿を探したけど、残念ながら見当たらなかった。
初めて結ばれたあの日から、一ヶ月が過ぎていた。
あの後、何度か会う度に私達は体を重ねた。
もう、戻れない所まで来てしまった。
「ふぅ」
自販機で買ったミルクティを口に含んで一息つく。
窓の外を見れば、もうすっかり辺りは日が落ちていた。
それでも、少しづつ温かくなってきて、街を歩く人々も春の装いになりつつあった。