その手が離せなくて

「ありがとう、萌。ごめんね、バカな友達で」


私の言葉を聞いて唇を噛みしめた萌の髪を優しく撫でる。

いつも、彼が私にしてくれている様に。

すると、瞳に涙を溜めていた萌がキッと顔を上げて私を見つめた。


「バカだよ、柚葉」

「・・・・・・うん」

「どうしようもないバカだよ!」

「うん」

「不倫なんて、狂ってるよ! 普通の思考の人がする事じゃない!」

「うん」

「最低な事だよ! 人としてやっちゃいけない事なんだよ!」

「分かってる」

「――・・・・・・だけどっ」


浴びられる罵声に、ただただ頷く。

それでも、一度言葉を切った萌が突然私に抱き着いてきた。


あまりに突然の事で後ろに転がりそうになったけど、耐える。

そして、鼻をすする萌の背中を恐る恐るギュッと抱きしめた。

すると。



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