その手が離せなくて
「ど、どこら辺がですか?」
あり得ない程、心臓がドクドクと脈打つ。
それでも、なんでもないフリをして頬杖をついて一ノ瀬さんを見つめた。
すると、少し考える素振りを見せた彼が腕を組みながら探る様な視線を私に向けた。
「ん~そうだな。なんでも無難にこなして、どこに行ってもいい子って感じで、手の抜きどころが分かっていて、相手に合わせるのが上手。あんまり人から憎まれる事のないタイプかな」
当たってる? と言わんばかりの顔で首を傾げた一ノ瀬さんを見て、思わず言葉を失う。
だって――。
「当たってる・・・・・・」
驚くほど、当たっていたから。
「本当?」
「はい。ほんと、そのまま私です。すごいっ!!」
「言ったでしょ? 俺と似てる所があるって。俺もそんな性格なんだ。それに、こんな仕事しているからか、人間分析が得意になってね。――あとは、人を見抜く力もありそう。望月さんは指導者向きだね」
優しく微笑んだ一ノ瀬さんを見て、一気に頬が熱くなる。
一瞬にして泳いだ瞳を隠そうと、持っていたグラスを持ち上げて残っていたお酒を一気に流し込んだ。