その手が離せなくて
春に
「はぁ・・・・・・」
無意識に出た溜息に気づいて、慌てて顔を取り繕う。
会議中だっていうのに、全く集中できない。
あれから何週間か経った。
桜の花は散ってしまった。
道端には、踏み潰されたみすぼらしい桜の花びらがあるだけで、木々は緑色に染まってきている。
彼からの連絡は、ない――。
「なんかあったの?」
会議が終わって事務所まで帰っている最中、私の顔を覗き込んで話しかけてきた先輩。
その姿に小さく微笑んで、首を横に振る。
「いえ・・・・・・」
「会議中、溜息ばっかり聞こえた気がしたけど?」
「あ、すいません」
「仕事? プライベート? よかったら聞くけど?」
いつもお世話になっている先輩が、心配そうに首を傾げた。
その様子を見て、相当酷い顔をしているんだなと察する。