その手が離せなくて
「よしっ」


ジーン。と痛む頬を両手で包んで気合を入れる。

仕事の時に、プライベートを持ちこんじゃダメだ。

しっかりしなきゃ。

ようやく立ち上がったパソコンを見つめて、資料を取り出す。


「お、ようやくヤル気になったの? 望月」

「あ、先輩。さっき言ってた花見の件、忘れないで下さいよ~」

「分かってるわよ。約束通り、美味しいお寿司屋さんも連れて行ってあげるわよ」

「やった~」


両手を上げて喜ぶ私を見て、クスクスと先輩が笑いながら自分のデスクへと戻っていく。

隣では後輩が、いいなぁと唇を尖らせている。



――そうだ。

立ち止まっていても仕方ない。

ウジウジしていても何も解決しない。

笑顔でいれば、きっといい方向に物事は進んでいくと信じなきゃ。

前に、前に、生きようとしなくちゃ。


気合を入れ直して、パソコンのキーボードに手を置く。

やるぞ。と心の中でそう呟いた、その時――・・・・・・。
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