その手が離せなくて
あまり話し声を出さない方がいいと言われ、互いに口を噤んだまま水面を見つめる。

そして、幾分か経った時――。


「きた」

「え?」

「ひいて!」


突然耳元で彼が声を上げて、思わずビクリと肩が上がる。

それでも、私の手を支えていた彼がグイッと竿を持ち上げた瞬間、今まで無かった感触を手に感じた。


竿の先に見える、大きな魚。

ピチピチと光を浴びて、動いている。


「つ、釣れた!!」

「けっこう大きいな」

「すごい!! 釣れた!!」


目の前まで持ってこられた魚を見て、目を輝かせる。

何度もスゴイ! を連呼して、何度も後ろを振り返る。

そんな私を見て、ケラケラと笑った彼。

まるで子供の様にはしゃぐ私の頬に優しくキスをした。


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