その手が離せなくて
忘れてしまいそうになる。

この恋の『罪』を。

この恋の『重み』を。


微かに触れた指輪の感触で泣きそうになるけど、それでも彼の笑顔を見ると忘れてしまう。

一瞬のうちに、罪悪感が消えてしまう。

辛さが、幸せに変わる。



「一ノ瀬さん」

「ん?」

「連れてきてくれて、ありがとう」


展望台に上って、消えていく夕日を見ながらそう呟く。

真っ赤に染まった世界の中には、私と彼だけ。


穏やかな時間の中で過ごしていると、世界が私と彼だけなら良かったのに、なんてバカな事を考える。

ここみたいに、誰も私達の事を知らなければいいのに。

ずっと、こうやっていれたらいいのに。


だけど――。


「そろそろ、行くか」


幸せな時間ほど、過ぎるのは早いって決まっている。



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