その手が離せなくて

どこか申し訳なさそうに微笑んだ彼に微笑み返す。

一気に夢から現実に戻ったみたいで、悲しくなった。


魔法が解けて、いつもの孤独と切なさが襲う。

タイムリミットが来たんだと、頭の中で誰かが呟いた。


「・・・・・・そうだね」


本当は帰りたくなんてなかったけど、小さく頷いて車へと向かう。

もっと一緒にいたい。なんて、そんな我儘言えない。

今日1日一緒に過ごせただけも凄い事なんだから。


駄々をこねて、めんどくさい子だと思われたくない。

嫌われたくなくって、いい子を演じる。


――だって、それくらい私達はどこか紙一重の関係だから。


どれだけ一緒にいようと、同じ景色を見て笑いあおうと、帰る場所は違うのだと思い知らされる。

一緒に夜を過ごして、一緒に朝を迎える事はないんだって。


これから一緒の家に帰れたら、どれだけ幸せだろうと、沈んでいく真っ赤な夕日を見て思った。




< 242 / 366 >

この作品をシェア

pagetop