その手が離せなくて
帰りの車は、どこか静かだった。

窓の外の景色に灯りが灯りだす。

ポツリポツリと空に向かって伸びるビルが見えだすと、言いようのない孤独感に襲われた。

彼の方を見ない様に、ただ景色を眺める。

すると。


「眠かったら寝ていいぞ」

「え?」

「疲れただろ」


何も言わない私を見て眠いと思ったのか、彼は運転しながらも私の髪を一度そっと撫でた。

その優しさに胸が締め付けられて、帰りたくないと更に思う。

離れたくないと、心が叫ぶ。


「大丈夫。逆に一ノ瀬さんこそ疲れてるのに運転大丈夫?」

「俺はいいんだよ。運転好きだし」

「ふふ、そうなの?」


小さく笑った私を横目で見た後、車内に流れていた音楽のボリュームを下げた彼。

そして、私の肩に腕を回した。


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