その手が離せなくて

「目閉じてていいぞ」

「・・・・・・うん」

「着いたら起こすから」


ポテンと彼の肩に頭を乗せた私の頭上にキスが降ってくる。

チュッと小さな音を立てて、彼はまた前を向いた。


まるで子供をあやす様に、ポンポンと一定のリズムで彼が私の肩を優しく叩く。

その温かい手と、彼の香りに、徐々に瞼が重くなった。

さっきまで疲れていない。なんて思っていたけど、急に眠気が襲ってきて、小さな欠伸をかみ殺す。

そんな私を見て、彼がクスリと小さく笑って再び音楽を小さくした。


「おやすみ」


ポツリと彼がそう呟くのを聞いて、瞼を閉じる。

ずっとこのまま家まで着かなければいいのに、なんて心の中で思いながら。









「柚葉」


不意に聞こえたのは、彼の声だった。

重たい瞼をそっと開ければ、エンジンを切った車内が見えた。


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