その手が離せなくて
顔が赤くなるのを感じながら、逃げる様に窓の外に視線を向ける。
それでも、真っ暗な世界を見て心が寂しさを覚える。
もう、バイバイか――。
「帰ってゆっくり休めよ」
そんな気持ちに拍車をかける様に、彼の声が耳に届く。
ゆっくりと振り返ると、ハンドルに体をあずけながらこっちに視線を向けている彼がいた。
「今日1日ありがとう。すごく楽しかった」
「あぁ、俺も楽しかった」
少しでも彼が寂しそうな顔をしたら駄々をこねようと思ったのに。
それでも、彼はいつもの通りに瞳を垂らして笑った。
その姿を見て、やっぱり、こんなにも寂しいと思うのは私だけかもしれないと思って胸が詰まる。
私だけ、こんなにも溺れているんだと思ってしまう。
今にも零れそうになった『好き』という言葉を飲み込む。
私は一体、彼の何なんだろう。
そう問いかけたいのに、怖くて聞けない。
この幸せだった時間を、幸せのまま終わらせたい。