その手が離せなくて
「難しい･･････」

「簡単なようで、そうする事が難しいんだよな」


確かに。と思って頷く。

大人になって、感情を表に出す事が少なくなってきた気がする。

周りの目もあるし、今まで自分が作り上げてきた『イメージ』というものもある。


いい人に見られたい。

周りに波風立たせたくない。


そんな思いが前に立って、自分の感情を押し殺している。

だって、その方が生きやすいから。


だけど、本当はそれがとても生きにくい事だとは自分でも気づいていないんだと思う。

そういう事に慣れてしまったから。


「そっか･･････」

「あぁ」

「――じゃぁ、私も人間らしい人になります!!」


おどけてみるように、ビシっと敬礼のポーズをして微笑む。

そんな私を見て、頑張れ。と彼は笑顔を作った。

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