その手が離せなくて

私には当てはまらないな。と思って少し悲しくなる。

さっきみたいに、感情を押し込めてばっかりだから。

聞かなきゃよかったと、少なからず後悔する。


こんなバカな事聞かずに、笑って今日は楽しかったって言えばよかったのに。

彼の私への気持ちを知りたくて、遠回りをして私への気持ちを確かめた。


『柚葉みたいな人』なんて、甘い言葉を期待して――。

だけど、欲しかった言葉はそこには無かった。


「じゃ、またね」

「あぁ、また」


このままいちゃ泣いてしまいそうで、逃げる様に車の扉を開ける。

一度隣に視線を向けて、ニッコリと微笑むと彼も微笑み返してくれた。


たまに、彼が何を考えているか分からない時がある。

欲しい言葉が彼の口から落ちる事はなく、不安ばかりが大きくなる。


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