その手が離せなくて

足音

「ふふっ」

「ねぇ、柚葉」

「ん? なぁに?」

「そんな乙女だったっけ?」


テーブルを挟んだ向かい側に座る萌が、ゲンナリした顔で溜息を吐いた。

その言葉の意味を理解して、自分が恐ろしく気持ち悪い声を出していた事に気づく。

我に返って慌てて『んんっ』と喉の調子を整えたけど時既に遅しだった。


「楽しい事でもあった?」

「ま、まぁね」

「予想はつくから聞かないけど、ほどほどにね?」


萌のその言葉に不謹慎だったと反省して、残り少なくなっていたワインを飲み乾す。

あの楽しかった1日デートを思い出すだけで、何杯も飲める気がした。



――あの日から2週間が過ぎた。

楽しかった反動で会いたくはなるけど、我慢する事に慣れてきた様で、今では落ち着いた心で彼からの連絡を待っている。

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