その手が離せなくて
どんどん好きになっていっているのは、自分でも分かっていた。

何をしていても、彼の事を考えている。

彼が私の世界の中心だった。


「幸せそう」


お酒のおかわりを頼んだ私を見て、萌が頬杖を突きながらポツリと呟いた。

思わず首を傾げると、萌は自嘲気に笑って溜息を吐きながら背もたれに深く体を預けた。


「今まで見てきた中で、一番幸せそうだよ。柚葉」

「そう?」

「うん。満たされてる顔してる」


その言葉に思わず自分の頬に手を添えるけど、自分では分からない。

確かに今まで付き合ってきた彼氏達に比べると、この胸のドキドキだったり、締め付ける胸の甘い痛みは比べものにならない程大きい。


「もっと早くに出会いたかった。って思う?」


何も言わない私に、萌が静かにそう問いかけてくる。

だけど、その言葉を聞いてふっと笑う。


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