その手が離せなくて
「寂しい時に会いたくなるのが、私ならいい。1人になりたくない時に、辛い時に、泣きたい時に、会いたくなるのが私だったらいい」

「――」

「それは『都合のいい女』なんかじゃないって思わない?」


自分のいいように解釈しているだけかもしれない。

そうだといいと願っているだけかもしれない。

だけど、そこに少しでも『想い』があるのならば、私は救われる気がする。


「例え彼が誰かのものでも、彼の足りない部分を支えてあげているのが私なら、私はそれだけで前を向けるの」


互いに支え合って生きていると思いたい。

利用しているなんて悲しい言葉で終わらせたくない。

あの人の大切な人には埋められない隙間を、私が埋める事ができればいい。

寂しい時に思い浮かぶのが真っ先に私なら、それだけでいいの。


「私狂ってるのかな?」


小さく笑って問いかけた私に、萌は小さく笑った。


「素敵だと思うよ。それだけ誰かを愛せる事」


その言葉を聞いて、私も深く頷いて笑った。

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