その手が離せなくて
「会いたいよっ。お願い・・・・・・私から彼を奪わないでっ」
泣き叫んだ喉は熱く痛みを伴う。
拭う事もせずに流れる涙が、服を濡らしていく。
突然訪れた恋の終わりが、夢ばかり見ていた私の心を打ち砕いた。
光輝いていた未来ではないけど、もしかしたらこのままずっと一緒にいれるんじゃないか。なんて夢みたいな事を考えていた自分が馬鹿に思えた。
どこでバレたかなんて分からない。
誰に見られていたかなんて、分からない。
どうして、彼女が私の名前を知っていて、家までの帰り道を知っていたかなんて、分からない。
ただ一つ、分かっているのは。
もう、彼には会えない事。
そして、元の生活には戻れない事――。
「私の人生、終わったのかな」
場に似合わない狂ったようなクスクスと笑う私の声だけが、色を無くした世界の中で寂しく響いていた。
恋の終わりは。
思っていたよりも、早かった。