その手が離せなくて
望月 柚葉(もちづき ゆずは) 26歳


大学から田舎を出て、東京で1人暮らしをしている。

中小企業の企画担当。

特に美人でもなければ、秀でた才能もない、どこにでもいるような26歳独身。

ただ世の中の歯車として毎日働いて、流れに身を任せて生きている。

一応、彼氏はいる。



「ただいま」


彼とは大学の時から付き合っている。

同じゼミだった事がキッカケだ。

付き合って5年。

周りからは結婚はいつ? って聞かれるけど、まだそんな予定はない。

私は東京で、あっちは茨城に就職。

なかなか会えないから、今日会うのは久しぶりだったのに――。


「先輩に負けた~」


アイツの好物のハンバーグを作ろうと思って、せっかく材料を買ったのに、全部ぱぁ。


でも、こんな事よくある。

5年も付き合っていれば、マンネリだってするし。

今更ラブラブな時期になんて戻れっこない。

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