その手が離せなくて






















「お世話になっております、望月です」


見上げる程のオフィスビルに入り、顔見知りの受付嬢にニッコリと微笑む。

今私が一緒に仕事をしている取引先は、かなり大手の企業。

うちの会社でも3本の指に入る程の取引先だ。

こういった大きな仕事を任せてもらえると、モチベーションが上がる。


打合室に通されて、荷物を下す。

ガラス張りの明るい部屋の中は、なんともスタイリッシュな雰囲気。


「さっすが大企業。お金持ち~」


部屋の隅にいた円形の電動お掃除ロボットを見て、小さく呟く。

忙しくて家の掃除を怠けていたから、以前買おうと迷っていたけど、値段の高さに断念した代物だ。


もしかして各打合室に一台づつ置いてあるのかな?

ざっと見た感じ、10室はある。

余っているなら、一台くらい分けてほしいもんだ。


そんな事を考えながら、デスクの上に資料を広げていく。

こんな場所で仕事をしていると、自分が物凄くエリートになった気分になるから不思議だ。
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