その手が離せなくて
◇
「すいません、少し会社に確認の電話を入れてもいいですか?」
打合せも終盤に差し掛かった頃、デスクの上に散らばった資料に目を通しながら、席を立つ。
バッキバキに固まった首を回しながら打合せ室を出て、小さく溜息を吐いた。
ある程度まで話は纏まってきたが、やはり上の確認も取っておきたい。
カツカツとヒールを鳴らしながら、人気のない廊下の端に向かう。
洗練された真新しいオフィスだからか分からないが、すれ違う人達はどこかエリートのように見えてしまう。
自然と胸を張って歩くが、どう頑張っても知能レベルは勝てないと思い少し落胆する。
見栄を張った自分を哀れに思いながら、途中にあった自販機を横目に、帰ったらビールだな。と心の中で呟いた。
Trrrrr・・・・・・
電話の呼び出し音を聞きながら、壁に掛けられた綺麗な海の絵画を見つめる。
そういえば、しばらく海なんて見てないなぁ。
来年は萌とどこか綺麗な海にでも遊びに行こう。
それまでにダイエットしておかなきゃ。