その手が離せなくて
「だけど大丈夫だよ、萌。私は大丈夫」
明るい声でそう言うと、萌は伏せていた瞳をゆっくりと上げた。
我慢して泣かない私の代わりに泣いてくれたのだと思うと、本当にいい友達を持ったと思う。
「大丈夫だから」
もう一度そう言って、口角を上げる。
心配性の萌の事だから、泣いてばかりいた私の事を心配しているのだと思う。
だけど、これから先は傍で一緒に泣いてくれる萌はいない。
私、一人になる。
だったら、強くいなきゃ。
柔らかく微笑んだ私の手をそっと包む小さな手。
真っ直ぐに向けられる視線は、変わらず強かった。
グッとカップを握って、その瞳を見つめ返す。
それと同時に、初めて彼の事を萌に話した日の事を唐突に思い出した。
迷いながらも、まだ幸せだった、あの日を。