その手が離せなくて

「はぁ・・・・・・」


深い溜息を吐いてソファに深く腰かけた。

電気が点いているのに、どこか部屋が暗く感じる。

なんだか、それが酷く寂しく感じて思わず膝を抱えた。


――もっと、誰かに強く愛されたい。


彼氏がいるのに、そう思ってしまう自分はダメな人間だと思う。

それでも、心のどこかにポッカリと穴が開いている気がする。

たまにその隙間に風が吹き込んできて、寒くて心細くて、仕方なくなる。



「乾杯」


心のどこかで誰かを求めている。

もっともっと、溺れる程の想いに恋焦がれている。


「今日で付き合って5年・・・・・・か」


2人の記念日も色褪せてしまった。

思い出は沢山増えたのに。


どうしてだろう――。

失っていくものばかり数えてしまう。

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