その手が離せなくて
「その言い方、反則」

「え?」


挙動不審な私を横目に、クスクスと笑いながら一ノ瀬さんが胸元から取り出したのは、一枚の名刺。

そして、スーツの胸ポケットからペンを取り出して、スラスラと何やら書き出した。

そして。


「これ、俺の連絡先」


反射的に差し出されたソレを受けとって、言われた通り後ろを見ると、手書きで番号が書かれていた。


「それじゃ」

「あ、あのっ!!」

「連絡しますっ!」

「あぁ」

「あと、ありがとうございました」

「何が?」

「送ってもらって」

「いいよ。俺もお茶ご馳走様」
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