その手が離せなくて
だけど、もう私も子供じゃない。
どうしなきゃいけないかなんて、誰かに聞かなくても分かる。
ううん・・・・・・。
そうしなきゃ、いけない――。
「もう、会わない」
「――」
「二度と、会わない」
自分で言った言葉が、心を打ち砕く。
息もできない程、胸が苦しい。
「望月――」
「不倫なんて、死んでもしないっ」
私の名前を呼んだ彼の声に被せるようにそう叫んで、勢いよく駆け出した。
もう一度私の名前を呼んだ彼を振り切って。
転びそうになる足に力を入れて。
逃げる様にエレベーターに駆け込んだ。
「――っ」
扉が閉まったと同時に、崩れ落ちる。
もう立っている事すらできなかった。
我慢していた涙が頬を伝う。
潰れそうな胸を押さえて、唇を噛みしめた。