その手が離せなくて





「萌! お待たせっ」


綺麗に磨き上げられた大理石を蹴って、ソファに座っていた萌の元に駆け寄る。

そんな私の姿に気づいて、萌はニッコリと笑って手をあげた。


「ゴメン! 遅れたっ」

「いいよ。仕事だったんでしょ? お疲れ様」

「そ~。もう休日に電話するの本当止めてほしい」


基本カレンダー通りの休みだけど、たまにこうやって呼び出しの電話がある。

業者からだったり、取引先だったり。

その度に現場まで向かう。


でも、仕事は嫌いじゃない。

やりがいも感じている。

変わらない日々に、少しの刺激を与えてくれる。


「間に合って良かった。ほら、もうすぐ始まるみたいだよ! いこいこっ!」


今日の合コンだって、そう。

変わらない日々に、こうやってスパイスを与える。

人生に飽きない為の、スパイスを――。
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