その手が離せなくて
糸
あれから、一週間が過ぎた。
たしか、一週間だった気がする。
曜日の感覚がよく分からない。
無心でパソコンを打ちこんで、山の様な資料に顔を埋めた。
「お、望月最近頑張ってるな」
パチンとキーを弾いた所で、不意に先輩から声がかかった。
顔を上げて振り返り、コーヒー片手に私を見下ろすその姿に笑みを作る。
「のんびりコーヒー飲んでると、追いぬいちゃいますよ?」
「お、言うね~」
「さっき頼まれていた資料、デスクの上に置いてあるので確認お願いします」
「お、サンキュー」
片手を上げながら笑って去って行った先輩の後ろ姿を見つめて、バレない様に小さく溜息を吐いた。
作っていた笑みが一気に剥がれ落ちて、表情というものがなくなった。
一週間が過ぎた。
あの日から、一週間が――。