その手が離せなくて
「そうですが」
動揺した事を悟られない様に、淡々と言葉を落とす。
心の中は、一気にグルグルと嵐の様に取り乱し初めていたけど。
そんな私をチラリと見てから、上司は驚く事を口にした。
「来月、その会社主催で温泉旅行があるらしい」
「はいっ!?」
思いもよらなかった言葉に、素っ頓狂な声が出た。
あまりにも大きな声だった事に驚いたけど、かまっていられない。
「お、温泉って、どういう事ですかっ!?」
「いや、俺も今資料貰ったばかりだから詳しくは知らないが」
「知らないって・・・・・・」
「ただ、取引先との親睦を深める為って記されているから、そういう事だろ」
卒倒しそうな私とは正反対に、あまり興味のなさそうな声でそう言う上司。
ボリボリと頭を掻きながら、どこか面倒くさそうに眉間に皺を寄せた。