その手が離せなくて

「望月は出席でFAX流しておいたから」


本当にこの人は適当なんだから。

そう思っていた時に言われた一言に、目が点になる。

一瞬言葉の意味が分からずに、ポカンと口を開けて固まった私を見て、上司が不思議そうに首を傾げた。


「あたり前だろ。この取引先には世話になってるんだ」

「でも、温泉ってっ!!」

「これも仕事のうちだ。詳しく分かったら連絡が入るだろ。お前のパソコンのアドレスを送っておいた」


また勝手にっ!!

どうして当の本人に何の確認をせずに、そうトントンと話を勝手に進めているんだ!!

怒りで思わず掴みかかりそうになったけど、我に返って耐える。


「お前とペアのやつは子供の学校行事があるとかで行けないそうだ」

「はいっ!?」


逃げたな!! と思って、一緒に担当している先輩を睨み付ける。

すると、あからさまに視線を外した所を見て、子供の学校行事なんて嘘だと悟る。

卑怯者!!



< 94 / 366 >

この作品をシェア

pagetop