その手が離せなくて
会いたい。
会いたくない。
相反する二つの気持ちが交差して、頭の中がグシャグシャになる。
会いたい、なんて思っちゃいけないのに。
もう、関わっちゃいけないのに。
忘れるって決めたのに。
でも――。
「仕事、だから仕方ないよね・・・・・・」
鞄の中からスケジュール帳を出して、温泉旅行の日に〇を付ける。
口元が微かに緩むのを感じながら、書き込んだその日をじっと見つめた。
◇
「望月柚葉様ですね」
旅館のフロントの方が名乗った私の名前を繰り返す。
はい。と返事をすると、ニッコリと女性は笑顔を作った。