呆れるくらいに君が恋しい。

深山 桜ver

好きな人がいる。

女の子なら誰にでも優しくて
ちょっと軽いなって思うんだけど
でもちゃんと誠実な人。
彼に告白した子は山程いて
でも誰とも付き合ったって話は聞かない。
イケメンなのに気さくだから、
男子からも人気で
誰からも好かれるような人。
…坂木 弥生くん。



ある日の放課後。
委員会で遅くなった私と
たまたま忘れ物を取りに来た君。
カーテンが閉じられた少し暗めの教室には
私達2人だけだった。
「忘れ物しちゃった。」
誰にでも優しい君は、
こんな私にも話しかけてくれて
「そうなんだ。」って私も笑う。
少し話して、
でも長くは会話が続かなくて、
しばし無言の沈黙。
帰ろうと思ってカバンを掴んで
「ばいばい」
君の横を通り過ぎた。
でも、腕を捕まれて、
「ねぇ、キスしたことある?」
突然君に聞かれた。
「ない、よ?」
驚きながらも答えると、
「彼氏出来たときの為に予行練習しない?
キス、してあげようか?」
頬に手を添えられ、
後ろに数歩下がるが、靴が壁にあたり、
逃げ道がないことを思い知らされる。
段々君の顔が近づいてきて
「嫌?」
そう聞かれる。
「嫌、じゃない。」
好きな人に迫られたら嫌だって言えない。
目を閉じた君につられて、目を閉じると、
抱き締められてキスをされた。
「んっ。」
< 2 / 43 >

この作品をシェア

pagetop